チャプター 5

私は夜が更けるまで、船室でじっと待っていた。時間が経つにつれて、好奇心は強まるばかりだ。人魚を移送するための埋め込み式水槽の準備が進んでいると知って、少しは気が紛れる。自分で指揮を執れないのは歯痒いが、甲板には大勢の人が出入りしているから、ただ見学するだけならスタンとの「合意」には違反しないはずだ。だが、まだクルーたちと顔を合わせる気にはなれない。公衆の面前でスタンに異議を唱えたことで、私は彼に恥をかかせた。その報復として、彼は同僚たちの目の前で私を徹底的に辱めたのだから。

普段、ウィルや他の仲間との関係は悪くない。私たちは「対スタン」で結束している。授業の後にはビールやマルガリータを飲みに行き、何時間もスタンの悪口を言い合ったりもする。それで何が変わるわけでもないが、一日を乗り切る助けにはなるのだ。だが、大学の規則も監視も及ばないこの外洋で、しかも学術的な名声まであと一歩という状況下で、スタンはより大胆に、より残酷になった。目的のためなら手段を選ばない男だ。自分が特別だなんて勘違いはしていない。私は学位プログラムに数少ない女性の一人であり、この航海に参加している女性は私だけだ。スタンは私たち全員にとって、最低の豚だ。出航してすぐ、彼が私に手を出し始めたときも、誰も驚きはしなかった。

私は概ね、彼の誘いを無視したり、うまくかわしたりしてきた。だが、人魚を見つけたことで、彼の中で以前はなかった何かに火がついたようだ。まるで、自分自身に何かを証明したかのように。強く押しさえすれば、どんなに現実離れした望みでも手に入るのだと。もっと強く拒絶しなかったことで、知らず知らずのうちに彼を増長させてしまったのではないか。そう思わずにはいられない。

ウィルたちが私を庇ってくれるとは期待していない。彼ら自身、スタンに立ち向かうことさえできないのだから。同じ船に乗り合わせているからといって、孤独や惨めさが癒えるわけではないのだ。だから私は部屋に鍵をかけ、甲板の各所に設置されたカメラに接続された不安定なアプリを通じて、水槽の準備作業を監視し続けた。

実質的に、その埋め込み式水槽は船の後部甲板に設置された中規模のプールのようなものだ。観察ステーションと、必要に応じて水中に空気を循環させる酸素供給装置が装備されている。運用にはコストも手間もかかるが、バイオボックスよりはずっとマシな選択肢だ。完璧ではないが、これなら十分だろう。

チームが水槽を海水で満たし、意識のない人魚の巨体を別のタンクから移すという骨の折れる作業に取り掛かるのを、私は画面越しに見守った。厳しい一日の仕事を終え、彼らが憂さ晴らしのために船内の食堂へと引き上げていく。それでも私は、浮かれ騒ぐ声や興奮した喧噪が完全に静まるまで待ち続けた。船内で起きているのが私だけだと確信したとき、ようやく私は彼の元へ向かった。

誰にも気づかれないよう静かに廊下を抜け、後部甲板へと出る。嵐は収まり、穏やかな霧雨が残るだけとなっていた。夜気は冷たく澄んでいて、漆黒の空には星が散りばめられている。私は埋め込み式水槽へと近づく。期待と恐怖で、心臓が早鐘を打っていた。

水槽の中で目を覚ましていた人魚と目が合った。彼は静かに水に揺蕩(たゆた)いながら、暗い瞳で私を見つめている。まるで、ずっと前から私を待っていたかのように。その眼差しには、私を引き込んで離さない何かがあった。不安を煽ると同時に、抗いがたく魅了されるような、好奇心と深淵が入り混じった瞳。私は生唾を飲み込んだ。恐怖と胸騒ぎに心が蝕まれていくのを感じる。それでも私は勇気を振り絞り、水槽へと近づいた。

距離が縮まるにつれ、水が赤く染まっていることに気づく。彼の腕にある酷い傷から流れ出しているのだ。私は息を呑んだ。

肉は裂け、ギザギザになった傷口が前腕に沿って深く走っている。傷は生々しく血にまみれ、端は赤く腫れ上がっていた。鋭い歯が食い込み、皮膚を引き裂いた跡が見て取れる。サメに襲われたのだろう、噛み跡であることは明白だった。どうして他の誰もこの傷に気づかなかったのか、私には理解できなかった。

胸が締め付けられるような痛みを覚えた。彼を苦痛の中に放置することなど、耐えられそうにない。私は大きく深呼吸をして、傷の手当てをしようと決意した。震える指で、ゆっくりと水槽の蓋を開ける。

一歩踏み出すと、彼もそれに合わせて動き、片側に身を寄せて警戒するように私を睨んだ。

「お願い」震える声で私は囁いた。「助けに来たの」

人魚の上半身が水面から現れる。煌めく鱗から水が滴り落ち、甲板の薄明かりを反射している。海藻のように絡まり合った黒髪が、彼の肩に張り付いていた。底知れない瞳が私を射抜き、私は凍りついた。月明かりの下で見る彼は、あまりにも野性的で、衝撃的なほど美しかったからだ。その顔立ちは際立っていた。鋭角的な顎のライン、高い頬骨、長い黒髪、そして何かを語ろうとするかのように僅かに開かれた、肉感的な唇。言葉は発せられなかったが、私たちの周りの空気は潮の香りと、船体に打ち付ける波の重い響きで満たされていた。

後ずさりしようとした瞬間、濡れた甲板で足が滑った。バランスを崩す。体勢を立て直す間もなく、人魚の手が伸びてきて私の足を掴んだ。その力は強かったが、痛みはなかった。彼は捕食者のような優雅さで、明確な意思を持って私の方へと這い寄ってくる。心臓が早鐘を打ち、パニックが全身を駆け巡る。私はとっさに手を伸ばし、近くにあった麻酔銃の一つを掴み取った。必要なら身を守るために。

彼は私の腹部の下あたりで止まり、鋭く強烈な視線を向けてきた。新鮮な獲物を見るようなその目に、背筋が凍る。深海のように黒い瞳には原初的な飢えが宿っており、私は呼吸を整えることさえままならなかった。波の音と船のきしむ音が、激しく高鳴る私の鼓動と重なる。

「お願い」私は震える声で繰り返した。「あなたを助けたいだけなの」

彼は動かず、瞬きひとつせずに私を見つめ続けている。世界が急速に狭まり、私たち二人だけの空間になったかのようだった。外の嵐など、遠い記憶の彼方だ。手をついた甲板は冷たく、湿気が衣服を通して染み込んでくる。夜は静寂に包まれていた。聞こえるのは、時折遠くで鳴く海鳥の声と、船を叩く波のさざめきだけ。

その目つきには、不気味なほど見覚えがあった。その事実に背筋が冷たくなる。呼吸を整えようと必死にあがく。それはスタンが私を見る時の目だ。まるで私を所有しているかのような――私を犯したいと思っている時の目。

だが、そこに嫌悪感はなかった。私が感じたのは……ただ、どうしようもない好奇心だけだった。

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