第六十八章

平衡感覚が失われ、めまいがする――自由落下だ。崖から眼下の海へと真っ逆さまに落ちていく中、風が唸りを上げて体を打ちつける。心は絶叫しているのに、体は動かない。恐怖の奔流に飲み込まれ、全身が強張ったまま硬直している。

叫びたい、パニックになりたい。けれど、唇に重なるウェイクの感触が私を現実に繋ぎ止めていた。彼のキス――彼の吐息――が私の肺を満たす。衝撃とともに悟る。彼は私に酸素を与えているのだ。水面へと突っ込んでいく間、私を生かし続けるために。

氷のように冷たい海の衝撃が私たちを襲い、その威力に、すでにボロボロの体へ激痛が走る。だが、ウェイクは手を離さない。彼はすでに変身を遂げていた。その力...

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