チャプター 98

ウェイクの唇が、これまでにない激しさで私を求めてくる。バルコニーの手すりの冷たい金属に背中を反らせるが、その冷たさはほとんど意識に上らない。感じるのは彼だけ――彼の唇、彼の手、私に触れる肌の熱。眼下には街が広がっているけれど、世界は狭まり、今この瞬間、二人きりしかいないように思える。

腰を掴む彼の力が強まり、私は息を呑む。何か確かなものにしがみつこうと、彼の髪に指を絡ませた。夜気は肌に冷たいはずなのに、私の足の間に跪くウェイクのせいで、それすら遠い記憶のように感じる。考えられない。言葉も出ない。ただ、感じるだけ。

「ウェイク」

私の囁く声は、吐息とほとんど変わらない。何を言おうとしている...

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