第10章

彼女は深く息を吸い込み、氷のように冷えた、それでいて揺るがぬ眼差しで、ひと言ずつ叩きつけるように告げた。

「最後にもう一度だけ言うわ。駆け引きに付き合ってる暇なんてないの。離婚届はもう署名して、リビングのローテーブルに置いてある。あなたも早くサインして。きれいに終わりましょう」

氷上颯の顔がすっと陰る。だが彼は、まだ彼女が意地を張って騒いでいるだけだと思っていた。

「離婚だと? 相葉栞里、お前は忘れたのか。この5年、お前の衣食住は全部氷上家が面倒を見てきたんだ」

言い切る声音には、相手の急所を握っているという確信がにじんでいた。

「専業主婦のお前が、俺と別れて1日でも生きていけると...

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