第102章

氷上家は一瞬で大混乱に陥った。

警備が総動員され、黒塗りの車列がガレージから吐き出されるように飛び出して、水族館へ一直線に向かう。

氷上颯はオフィスを大股で出ると、ネクタイを乱暴に引き緩め、専用エレベーターに乗り込んだ。

狭い箱の中。眉間に深い皺を刻みながら、頭の中で何度も何度も可能性を洗い直す。

辰也が行きそうな場所――。

あの子は普段、いちばん栗山加奈に懐いている。まさか、自分で栗山加奈のところへ行ったのか?

氷上颯はスマホを取り出し、栗山加奈に発信した。

山の手のヴィラ。

栗山加奈はソファにもたれ、腫れを引かせる薬を頬にそっと塗り込んでいた。

相葉栞里に叩かれたあの一...

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