第107章

そのあと、相葉栞里の冷えきった声が受話器越しに届いた。迷いは一切ない。

「……分かった」

通話は一方的に切られる。

氷上颯はスマホを握り潰すように力を込め、指の関節が白く浮いた。目つきは底なしに陰鬱だ。

明日――市役所の前まで来れば、この女がどんな芝居を続けられるのか、見届けてやる。

渡辺秋沢は果物籠を手に、病室の前まで来た。扉は半開きだった。

ちょうど、氷上颯が電話口で冷たく言い放つ声が聞こえた。

「明日の朝9時、市役所の前だ」

通話を切った氷上颯は、険しい顔のまま病室を出ていく。

渡辺秋沢はすぐ横の階段室へ身を滑り込ませ、足音が遠のくのを待ってからスマホを取り出し、栗山加...

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