第111章

看護師が包帯交換の注意点を手短に告げ、踵を返して出ていった。

五十嵐琉生が手を引っ込める。

相葉栞里はゆっくりと目を開き、眩しさに瞬きをして光に慣らした。

ベッド脇に立つ男を見上げる。黒いトレンチコート。背筋の通った体躯。表情はいつもどおり、刃のように鋭く冷たい。

会計も薬の受け取りも、全部彼が済ませた。しかも、彼女のためにローヒールの靴まで買ってきている。

相葉栞里はその靴に履き替え、五十嵐琉生が薬を箱ごとに手際よく袋へ詰めていく様子を黙って見ていた。

氷上颯は夫だ。なのに病室で別の女を抱き、彼女の傷など見もしなかった。

それに比べて五十嵐琉生は、血のつながりもない赤の他人な...

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