第113章

氷上颯の手が、相葉栞里の手の甲を容赦なく叩いた。

びり、と痺れが走る。

握っていたスマホが指先からすり抜け、宙でくるくると回ったかと思うと……

ごんっ。

硬いタイルの床に叩きつけられた。

画面に一瞬でひびが広がり、二度ほどちかちかと点滅したあと、ぷつりと消えた。

相葉栞里は床に転がるスマホを見下ろし、目の温度を失った。

ゆっくり顔を上げ、氷上颯の瞳を真正面から射抜く。

「氷上颯。あなた、狂った女をかばってるだけよ」

氷上颯は嘲りを受け流した。腕の中の栗山加奈に視線を落とす。

血がスーツの上着を赤黒く染めていた。

――もう、引き延ばせない。

彼は腰を落とし、栗山加奈を横抱...

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