第114章

五十嵐琉生は、彼女のどこか血の気の引いた顔色を見つめ、視線をバッグの縁へ落とした。

「手に入ったか?」

相葉栞里は小さくうなずき、バッグからそれを取り出す。

五十嵐琉生の瞳の奥を、暗い光がかすめた。深くは訊かない。ただ、ぬるめの水のボトルを差し出す。

「先に休め」

病院の廊下。

三十分が過ぎても、検査室の扉は固く閉じたままだった。

氷上颯の堪忍袋の緒が切れる。大股で近づき、扉を強く叩く。

「検査、終わったのか!」

返事はない。

胸の奥がひやりとした。嫌な予感が一気にせり上がる。氷上颯はノブをひねり、扉を押し開けた。

――空っぽ。

検査室には誰もいない。

奥から看護師...

ログインして続きを読む