第120章

氷上辰也は完全に壊れていた。手にしていたスマホを、壁めがけて思い切り叩きつける。

がん、と鈍い音。跳ね返ったスマホが床に落ち、また重たい響きを残した。

「ママがいい! ママに出てほしい!」

病室のベッドの上で布団を蹴り散らし、喉が裂けるほど叫ぶ。

氷上辰也は泣きわめきながら手当たり次第に物を叩き、甲高い声が扉越しに廊下まで突き刺さった。

扉の外で氷上颯は眉間に深い皺を刻む。中へ入って宥める気にもなれず、苛立ちをそのままに予備の携帯を取り出した。指が迷いなく、覚えきった番号を打ち込む。

相葉栞里は彼の番号をブロックしている。だが今日は、どうしても問いたださなければならなかった。

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