第129章

相葉栞里の手首が、握り潰されそうな痛みに悲鳴を上げた。

必死に振りほどこうとするが、氷上颯に上から押さえつけられ、身動きが取れない。

「放して」

相葉栞里の声は、氷みたいに冷たかった。

「謝れ! いい加減、くだらねえことはやめろ!」

氷上颯は頑なに、彼女を睨み据える。

「――っ!」

鈍い衝撃音。

氷上颯が言い終える前に、身体が突然、強烈な力で蹴り飛ばされた。

よろめきながら数歩下がり、マイバッハのボンネットに背中から叩きつけられて、低い呻きが漏れる。

五十嵐琉生が長い脚を引く。濃い色のコートをまとい、顔つきは陰り切っていた。

大股で詰め寄り、相葉栞里の腕を掴むと、そのま...

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