第136章

技術スタッフが汗だくのまま振り返った。

「ボス、通話が短すぎます。位置の特定は無理です」

指揮センターが、また沈黙に沈んだ。

相葉栞里はスマホを握りしめたまま、ゆっくり立ち上がる。

誘拐犯の電話は、彼女の私用番号に直接かかってきた。しかも名指しで、廃工場へ一人で来いと言う。

金目当ての、よくある誘拐じゃない。

脳裏に浮かんだのは、篠宮菜帆の傲慢な顔。そして監視室で栗山加奈が浴びせてきた、あの糾弾。

――狙いは、私。

「少し気分が悪いの」相葉栞里が唐突に口を開いた。

「トイレに行ってくる」

五十嵐琉生は、半歩後ろに立っていた。

彼は彼女を知り尽くしている。こんな生死の瀬戸...

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