第137章

彼は余計なことは一切聞かず、そのままアクセルを踏み込んだ。

車は夜の闇へ滑り込む。

車内は薄暗く、安っぽい芳香剤の匂いが立ち込めていた。

鼻の奥をつんと刺す、嫌な匂い。

相葉栞里はシートに背を預け、窓の外で猛スピードで後ろへ流れていく街並みを見つめながら、指先を腕時計の発信機に押し当て続けた。

頭の中では、廃工場に着いた後の立ち回りを高速で組み立てていく。

車が東区に入ると、街灯はまばらになり、周りの建物も次第に荒れた景色へ変わっていった。

安物の香水の匂いが、なぜかさらに濃くなる。

ふいに視界が滲んだ。

脳の奥を強く揺さぶられるような眩暈。手足から力が抜けていく。

――...

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