第139章

栗山加奈は脇に立ったまま、胸の奥でふっと息をついた。

氷上颯は通話を切ると、振り返ってアシスタントに命じる。

「こっちの人間に伝えろ。警察より先に、必ず連中を見つけ出せ」

「颯、どうしたの……?」

栗山加奈が一歩近づき、探るように声をかけた。

「誘拐犯が逃げた」

氷上颯は眉間を指で押さえた。目の奥に、抑えきれない殺気が滲む。

「暗いし、東区は入り組んでるもの。警察だって見落としはあるわ」

栗山加奈は柔らかく宥めながらも、瞳の奥で、ひそかな光がちらりと走った。捕まらなかったなら、それでいい。逃げ切ってしまえば、証拠は消える。

――

私立病院のVIP病室。

相葉栞里はベッド...

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