第148章

彼女は黙って氷上辰也に取り分け、まるで律儀な母親みたいに世話を焼いた。

その様子に、氷上颯の張り詰めた神経がわずかに緩む。

早くこの食事を終わらせて、あの女から完全に解放されたい。ただそれだけだった。

「颯」

栗山加奈がワインボトルを手に取り、赤を二杯注ぐ。

一杯を氷上颯の前へそっと押しやり、自分のグラスを持ち上げた。凄絶なほど哀しげな目で。

「これを、あなたへの償いにさせて。飲み干したら……もう二度と会わない」

氷上颯は目の前の赤ワインを見た。深く考えもしない。

栗山加奈は追い詰められている。いまさら妙な真似をする度胸なんてない――そう思った。

彼はグラスを掴み、一気に喉...

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