第152章

「よく見えた?」鈴木瑠梨はスマホを引っ込め、氷のような目で彼を見据えた。「国際バレエコンクールの金賞は相葉栞里。全国大会のプリンシパルも相葉栞里」

一拍置き、嘲りをたっぷり含んだ声で、渡辺秋沢の最後の幻想を容赦なく叩き割る。

「それで、あんたが言ってた“S”だけど――あれは栞里が当時、目立たないように自分の名前の“しおり”から取った呼び名」

渡辺秋沢は、その場で凍りついた。

周囲の空気が一気に抜け落ちたみたいに息ができない。口を開けても、声が出なかった。

頭の中は真っ白。ただ、従妹の言葉だけが耳の奥で反響する。

Sは、しおり。

Sは、相葉栞里。

誇りにしていた高嶺の花。何年も...

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