第164章

相葉栞里は、わずかに息をのんだ。

「俺があいつに最低限の礼を尽くすのは、あいつに価値があるからじゃない。――君のためだ」

五十嵐琉生は彼女の目をまっすぐ見て、落ち着いた声で言う。

「君が俺のところでどれだけ大切な存在か、あいつに叩き込む。体面を与えてやれば、あいつは君を一分たりとも軽んじられない」

相葉栞里の胸が、小さく揺れた。

彼女はずっと、見過ごされてきた。

都合のいい駒として扱われるのが当たり前だった。

けれど五十嵐琉生は、些細な所作のひとつひとつで、彼女の背骨を支えるような「揺るがない自信」を与えてくる。

「行こう」

五十嵐琉生が手を伸ばし、彼女の手を取った。

―...

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