第32章

彼女はしゃくりあげながら、ふいに顔を上げた。怯えを隠しきれない瞳が、きらきらと揺れる。

「で、でも……もう一人の共犯が……」

「どうした」氷上颯は眉根を寄せ、表情を沈めた。

「全然、怖がってないみたいで……」栗山加奈は彼の胸元に顔を埋め、声を限界まで落とす。けれど言葉は、刃みたいに鋭かった。「あの人、彼女にすごく丁寧なの。縛ってるロープだってゆるゆるで……話してるのが聞こえたんだけど、昔から知り合いみたいで。颯……私、何かしたのかな。だからこんなふうに報復されるの? 彼女、私を殺したいんだ……」

栗山加奈の囁きは、毒を塗った針となって、氷上颯の神経を寸分違わず刺し貫いた。

「怖がる...

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