第46章

氷上颯は我に返ると、目の奥に残っていた翳りを、たちまち冷えきった色で塗りつぶした。

そうだ。彼女には五十嵐琉生がついている。あれほど強気でいられるのも、その後ろ盾があるからに違いない。

今の強硬さだって、しょせんは駆け引きだ。わざと突き放すようにして、自分に頭を下げさせるつもりなのだろう。

「好きにさせておけ」

氷上颯は鼻で笑い、胸の奥に燻る苛立ちをねじ伏せた。

「そのうち、諦める」

栗山加奈も、もう情けをかけるつもりはなかった。

その夜、一つの動画がネット上で爆発的に拡散された。

映っていたのは、誘拐事件の実行犯の妻だと名乗る女だった。カメラに向かって、胸が裂けそうなほど泣...

ログインして続きを読む