第47章

氷上家はこの件で面子を潰すわけにはいかない。氷上颯はなおさら、この裏切りに耐えられなかった。

ここから一歩でも踏み出せば――本当の、刺し違えだ。

相葉栞里は書類に目もくれなかった。澄んだ冷たい瞳に、迷いも怯えも一片たりともない。

「引き返す余地、ですか?」唇の端をわずかに持ち上げる。笑みは浮かぶのに、目は笑っていなかった。「五十嵐さん。あの人が、栗山加奈に私を踏みつけさせ、世間の総叩きを黙認して……挙げ句、私の実の息子まで餌にした。その瞬間から、この結婚は詰んでるんです。離婚するだけじゃない。あいつらの偽善の皮、引き剥がしてやる」

女の瞳の奥に宿る、背水の刃。そこを見て、五十嵐琉生の...

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