第49章

相葉栞里は人波のど真ん中に押し込められ、退く場所もない。

フラッシュが容赦なく目を刺し、耳元では質問の怒号がぶんぶんと渦を巻く。

それでも彼女の背筋は、一本の芯みたいに真っすぐだった。欠片ほどの怯みもない。

相葉栞里は、鬼気迫る記者たちの顔を越え、無数に瞬くレンズの海を越えて、人混みの後ろに立つ氷上颯へ、まっすぐに視線を向けた。

氷上颯は、警備に固く守られた安全圏にいる。

高みから見下ろすように立ち、相葉栞里が血の匂いに群がる媒体に囲まれ、追い詰められていく様を、冷ややかに眺めていた。

視線が、ぶつかる。

ざわめく頭の波と轟く喧騒を隔てて、相葉栞里は――かつて五年愛した男を見た...

ログインして続きを読む