第52章

「やだ……違う、違うの……私じゃない、そんなことしてない……」

栗山加奈は両手で頭を抱え、がたがたと全身を震わせていた。いつもの、か弱く可憐で男に守られるのが当然といったぶりっ子めいた面影は、もうどこにもない。

「どけッ!」

氷上颯は目を真っ赤に充血させ、怒り狂った獅子のように車のドアを蹴り開けて飛び出した。

すぐさまボディーガードたちが前へ出て、殺気立つ群衆を力ずくで押しのけていく。

氷上颯は栗山加奈の身体に染みついた吐き気を催すような悪臭など気にも留めず、自分のジャケットを脱いで彼女をきつく包み、そのまま地面から抱き上げた。

「颯……颯、助けて……あいつら、私を殺そうとしてる...

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