第60章

彼女は血の気の失せた下唇を噛み、しどろもどろに言い訳した。

「私がヒールに慣れてなくて、ふらついて落ちただけなんです。本当に、栞里お姉さんのせいじゃありません……」

「氷上さん、それはどういうことですか? 加奈さんがこんな大けがをしているのに、まだ責めるんですか!」

渡辺秋沢がすかさず前に出て、加奈をかばう。

「加奈さんは善意で動いただけでしょう。相葉栞里があんな乱暴に振りほどかなければ、加奈さんが落ちるはずなかったんです! 結局、悪いのは相葉栞里ですよ!」

氷上辰也も小さな拳をぎゅっと握って、負けじと声を張り上げた。

「そうだよ! 加奈おばさんはパパのためにしてくれたんだ! マ...

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