第65章

南区の私立病院。

どんよりと沈んだ空には黒雲が渦を巻き、重たい空気が胸を塞いで、息さえしづらい。

相葉栞里はタクシーを降りると、そのまま入院棟へまっすぐ向かった。

指先がかすかに冷たい。胸の底では、焦りが火のように勢いを増していく。

鈴木瑠梨は、この5年の暗い結婚生活の中で、彼女にとって唯一の光だった。いつだって猪突猛進で、真っ先に前へ出て、自分のために啖呵を切ってくれる女の子。そんな彼女を、自分のせいで氷上颯の手にかけさせるわけにはいかない。

相葉栞里がエレベーターを降りた途端、無表情な警備員が2人、すっと前に出て道を塞ぐ。

「申し訳ありません。こちらはプライベート病棟です...

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