第68章

相葉栞里は息を殺し、爪が掌に食い込むほど強く握りしめた。

「放してやれ、だと?」

氷上颯が鼻で笑う。声には、背筋が凍るような陰の冷たさと、見下ろす者だけが持つ傲慢さが滲んでいた。

「病院まで押しかけてきて、お前に指さして罵って、挙げ句お前を気絶させたんだ。どんな目に遭うか、最初から覚悟しておくべきだろ。加奈、お前は甘すぎる。この件には口を出すな。もう人を回して面倒を見させてる。皮の一枚でも剥がれなきゃ、氷上の人間を誰でも好きに罵れるわけじゃないって学ばない」

――どんっ。

頭の中で何かが爆ぜた。

葛西碧人は、嘘をついていた。

あいつは氷上颯の盾になって、時間を稼いでいただけだ。...

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