第7章

低く、聞き慣れた声が頭上で響いた。反論を許さない、強い調子。

相葉栞里は顔を上げ――氷上颯の、底の見えない黒い瞳にぶつかった。

いつの間に、来ていたの……?

中島社長は氷上颯の姿を認めるなり、さっと媚びた笑顔に切り替える。

「これはこれは氷上奥様! 氷上社長、どうぞお構いなく。奥様にお酒を飲ませるなんて、とんでもない……!」

氷上颯は相手にしなかった。相葉栞里の手からグラスを取り上げると、喉を鳴らして一気にあおる。迷いのない所作。乾いた音を立て、空のグラスを置いた。

伏し目がちに彼女を見下ろし、眉をわずかに寄せる。声色には、本人も気づいていない占有欲が滲んだ。

「……騒ぎは終わ...

ログインして続きを読む