第70章

相葉栞里は下唇をぎり、と噛みしめた。血の味が舌に滲んで、ようやく胸の底から噴き上がる絶望と怒りを押し殺す。

彼女は氷上颯をまっすぐ見据える。かつて愛情で満ちていた瞳には、いまや骨の髄まで凍るような冷えだけが残っていた。

「氷上颯」

声はひどく軽い。けれど、玉砕覚悟の気配が潜んでいる。

「鈴木瑠梨が無事でいるよう、祈っておいたほうがいい。そうじゃなきゃ……この命を捨ててでも、あんたたち全員に代償を払わせる」

その眼底の凄みを見て、氷上颯の胸が理由もなく跳ねた。ぞわり、と不安が背筋を駆け上がる。

「さっきまで威勢よく言ってたじゃないか。条件は何でも呑むって」

氷上颯は見下ろすように...

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