第71章

「石村さん……私にできることなら、どんな条件でも飲みます」

相葉栞里は薬をぎゅっと握りしめ、迷いなく言い切った。

石村さんは彼女を見つめ、濁った瞳の奥にかすかな賞賛を走らせる。白くなった髭を撫で、ゆったりとした口調で告げた。

「お前、昔はバレエをやってたそうだな。郊外に療養院がある。身寄りのない年寄りばかりが暮らしてる場所だ。今週末、そこで――バレエのチャリティー公演をやってやれ」

相葉栞里は、わずかに目を見開いた。

もっと意地の悪い条件を突きつけられると思っていたのに、拍子抜けするほどの内容だったからだ。

「……分かりました。お引き受けします」

相葉栞里は力強くうなずく。冷え...

ログインして続きを読む