第73章

相葉栞里は一歩踏み込み、氷上の母を真正面から睨み据えた。

「氷上奥様。私を叱りたいんでしょう? だったら、触ってみればいい。今日ここから私が出られなかったら――この録音、即座に全ネットに流れる。氷上家のしきたりが上か、法律が上か……見せてもらおうじゃない」

氷上の母は、彼女の瞳に宿る容赦のなさに射抜かれ、血の気が引いた。言葉が喉で凍りつき、何ひとつ返せない。

相葉栞里は一同を蔑むようにひと撫でしてから、スマホをポケットへ戻す。踵を返し、迷いなく大股で玄関へ向かった。

今度は、誰ひとりとして彼女を止められなかった。

旧宅の門を出た瞬間、背後でばたばたと慌ただしい足音が弾けた。

氷上...

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