第74章

氷上颯は冷えきった殺気をまとい、病室へ大股で踏み込んだ。震えが止まらない栗山加奈を、乱暴なくらいの勢いで腕の中へかき抱く。

「お前ら、何してる!」

真っ赤に充血した目で、颯は警官を睨みつけた。

「誰の許可で入ってきて、彼女を刺激してる?」

警官は眉をひそめる。

「氷上さん。栗山加奈は誘拐教唆の疑いがあります。署で事情を――」

「事情聴取? この状態でどうやってやるんだよ」

颯は鼻で笑い、秘書から書類をひったくるように受け取ると、どん、と机に叩きつけた。

「H市でいちばん権威のある精神科医の鑑定書だ。栗山加奈は五年前の交通事故が原因で、重度のPTSDと重度うつ病――精神病性症状...

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