第75章

相葉栞里は車椅子の取っ手を握りしめ、指の骨が白くなるほど力を込めた。

病室の連中を二度と振り返りもしない。鈴木瑠梨を押し、踵を返して歩き出す。

廊下の空気は、病室よりも冷たかった。

数歩も行かないうちに、前を塞ぐ影があった。

葛西碧人。

車椅子の上で弱りきった鈴木瑠梨を見て、彼は眉を寄せる。目の奥に、ほんのわずかな後ろめたさが走った。

「どいて」

相葉栞里の声は平坦だった。氷みたいに冷え切っている。

葛西碧人は動かない。

彼は小さく息を吐き、言い訳を並べようとした。

「騙したのは悪かった。でも、わざと隠してたわけじゃない。颯はあのとき頭に血が上ってて、君が真正面からぶ...

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