第78章

「辰也、エビは食べられない……はずだ」

氷上颯は眉間に深い皺を刻んだ。だが、必死に記憶を辿っても、相葉栞里が当時なぜエビを禁じたのか――肝心の理由だけがどうしても思い出せない。

好き嫌いの問題だったか?

颯は、この家のことも、子どもの食事も生活も、何ひとつ分かっていない。思い出せるのは、相葉栞里の冷え切った表情と、息苦しいほどの支配欲だけ。

氷上辰也は「食べるな」と聞いた瞬間、むっとしてスプーンをテーブルに叩きつけた。

「パパ、うそつき! なんで僕、食べちゃだめなの!」

辰也は声を張り上げ、悔しさを隠しもしない。

「前のあの悪い人が、わざと食べさせなかったんだ! おいしいものは...

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