第80章

救急処置室に漂っていた張り詰めた空気が、ようやくほどけた。

相葉栞里は、固く張っていた背中の力がその瞬間に抜け、がくりと肩を落とす。目を閉じて深く息を吸い込み、肺の奥に溜まった濁った空気を吐き出した。

どれほど心をえぐる言葉をぶつけられてきたとしても――あの子が処置台の上で命の境をさまよっていた時、平然としていられるはずがない。

氷上颯は、落ち着いた呼吸を取り戻した息子を見つめ、胸の奥にのしかかっていた巨石がようやく転がり落ちた気がした。

そして振り返る。相葉栞里へ向けられた視線は険しく、眉間には深い皺。

「……あいつにそんな重いアレルギー歴があるって知ってたなら、なんで今まで一度...

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