第82章

「――あ、あんた……何様のつもりよ! 反抗する気!?」

氷上の母は、相葉栞里が目の前で人を殴ったのを見て、胸を押さえながらぜえぜえと荒い息を吐いた。怒りに任せてさらに噛みつこうとする。

「警備員! 警備員はどこ! この狂った女、今すぐ取り押さえなさい!」

「いい加減にしろ!」

怒鳴り声が、救急室の空気を一刀両断した。

ずっと脇に立っていた救急科の医師が、ついに堪えきれず大股で前へ出る。手にしていたカルテのバインダーを、机へ叩きつけた。

医師の顔は青黒いほど険しい。氷上颯、氷上の母、そして栗山加奈を指さし、容赦なく叱責する。

「ここを何だと思ってる! ここは救急室だ! 奥にいるの...

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