第83章

可笑にもほどがある。

相葉栞里は、氷上颯に七分ほど似たその顔を見つめながら、胸の奥に残っていた「母親」と呼べる最後の火種が、すうっと消えていくのを感じた。

灰すら、残らない。

彼女は小さくうなずき、怖いほど平坦な声で言った。

「いいわ。自由が欲しいなら、あげる」

相葉栞里は両手をコートのポケットに突っ込み、背筋をまっすぐ伸ばす。

氷上辰也を見る目は、血の繋がりのない赤の他人を見るそれだった。

「今日から、あなたは自由よ。エビでも、何でも。アレルギーが出るものでも、食べたければ食べればいい。何をしようが、もう一言も口出ししない」

声には一切の抑揚がない。なのに、ぞっとするほどの...

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