第88章

氷上颯は、床に転げ回って泣き喚く息子を見た。次いで、相葉栞里の微動だにしない背中を見た瞬間、怒りが一気に込み上げた。

「相葉栞里!」

氷上颯は大股で詰め寄り、氷上辰也を乱暴に引き起こして腕の中に庇う。陰のある目で彼女を射抜いた。

「お前の息子が血を流してるのに、見向きもしないで、よその子の手当てか? 心ってものがないのか!」

相葉栞里は五十嵐奏斗の頬に、最後の絆創膏をぴたりと貼る。立ち上がり、父子を見下ろした。

「血を流したのは、先に手を出したからよ」

声は淡々として、温度がない。

「自分が正しいと思うなら、その結果くらい自分で引き受けなさい」

「僕は悪くない! こいつが、マ...

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