第96章

胸の奥に深く埋めていた記憶が、堰を切ったように一気に押し寄せた。

「滝川監督……お久しぶりです」

相葉栞里は大きく息を吸い込み、喉の奥に込み上げる酸っぱさを押し殺す。どうにか笑みの形だけを作った。

滝川明也は彼女を見つめ、ふっと息を吐く。

「君は当時、うちの団でいちばん才能があった。あれを捨てたのは、もったいなさすぎる」

「それに今回は国内ツアーだ。会場と舞台の統括は俺がやってる。わざわざ観に来たってことは……まだ舞台を諦めきれてないんじゃないのか?」

熱のこもった視線が、栞里に突き刺さる。

「栞里、戻ってこい。君がその気なら、席はいくらでも空ける。数か月きちんと戻せば、絶...

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