第3章
マルコ視点
ガンビーノに新しい縄張りの分割について説明していた時、何かが俺の目に留まった。壁に並んだ監視モニターの一つだ。
俺は地図を指さしながら話し続けたが、ちらりとそのスクリーンに目をやった。地下室。取調室。
誰かが下にいる。
俺の手が止まった。
その時、彼女が見えた。
椅子に縛り付けられ、頭をのけぞらせ、顔から血を流している女。天井のライトが全てを白く飛ばしていたが、それでも十分に見えた。引き裂かれた花柄のドレス。血で濡れた黒い髪。そして、もう一つ。
彼女の喉元で、金色の光が煌めいた。
まさか。俺はモニターの操作盤を掴み、カメラを切り替えた。映像が鮮明になる。
あのネックレス。光を捉える、小さな聖母マリアのペンダント。
「モレッティ？ 聞いているのか？」
スピーカーからガンビーノの苛立った声が聞こえたが、俺の周りの音は全て消え、耳の中で打ち鳴らされる自分の脈拍だけが響いていた。
スクリーンの中、イザベラが何かを頭上に振り上げている。金属製の警棒だ。
狙いは、あの女の腹部。
俺は椅子を蹴り飛ばした。椅子は壁に激突する。腰のグロックに手をやり、ドアに向かったところで、再びガンビーノの声がした。
「モレッティ！ いったい何を――」
「申し訳ありません、ガンビーノさん。緊急事態です。日を改めて」
「プロトコル違反だぞ――」
俺はビデオ通話を切るボタンを押し、無線機を掴んで走り出した。
「地下室の女に手ェ出すんじゃねえ！」階段を三段飛ばしで駆け下りながら、無線に怒鳴る。「誰もクソ動くな！」
部下たちが驚いた顔で壁に身を押し付け、俺の道を空けた。俺が走ったことはない。俺が自制心を失うところを見せたことはない。
だが今は、どうでもよかった。
地下室のドアが目の前にあった。ドアの向こうから声が聞こえる。イザベラの、甲高く鋭い声。
「地獄に落ちろう！ あんたも、その私生児も！」
俺はドアに肩から突っ込んだ。
ドアフレームが内側に弾け飛び、ドアは部屋全体が揺れるほど激しくコンクリートの壁に叩きつけられた。
イザベラが、警棒を振り上げたまま、その女の上に立ちはだかり、動きを止めていた。
俺はグロックを抜き、発砲した。
銃声がコンクリートに反響する。弾丸はイザベラの腕から警棒を弾き飛ばし、部屋の向こう側へと回転させた。警棒は壁に激突した。
イザベラは顔を真っ白にして、よろめきながら後ずさった。
俺は彼女を見なかった。今、彼女を見たら、殺してしまうだろう。だが、まずは答えが必要だった。
俺は部屋を横切り、その女の横に膝をついた。
手が震えていた。これは俺のルチアだ。
血まみれの彼女の髪を顔から払いのける。血だらけだ。顔に、首に、ドレスの残骸に染み込んでいる。椅子は倒され、彼女はコンクリートの上に仰向けになっていた。手首と足首はまだ金属フレームに結束バンドで縛り付けられたままだ。
「ルチア……」俺の声がかすれた。「なんてことだ、ルチア……」
彼女の喉に触れ、脈を探す。頼む、頼む、頼む。
あった。弱いが、確かにある。
俺の目はネックレスに向けられた。三年前、あの小さな教会で俺が自ら彼女につけてやったものだ。チェーンは切れていたが、ペンダントはまだそこにあった。
「ボス……」背後から誰かの声がした。警備員の一人だ。「ボス、彼女はボスの……奥様だと？」
俺は顔を上げた。
部屋は人でごった返していた。警備員、実行部隊、何年も知っている男たち。全員が俺を凝視している。
イザベラは壁際で床にへたり込み、顔は土気色だった。手が震えている。
「俺の妻だ」俺は言った。
俺の声は冷たく、感情がなかった。殺しの命令を下す時の声だ。
「お前たちは今、俺の妻を拷問した。俺の子供の母親を殺しかけた」
部屋にいる全員の顔から血の気が引いた。
「モレッティ家唯一の跡継ぎのな」
イザベラが息を呑む音と嗚咽の間のような声を出した。「マルコ、知らなかった、本当に知らなかったんだ、身分証も持っていなくて、スパイかと思って、私は――」
「黙れ」
俺はナイフを抜き、ルチアの手首と足首の結束バンドを切り裂いた。プラスチックは彼女の皮膚に深く食い込み、生々しい赤い跡を残していた。腕には火傷の痕。顔には痣ができ始めている。
奴らは彼女を傷つけた。俺のルチアを。俺たちの赤ちゃんを。
できる限り優しく彼女を抱き上げた。彼女はとても軽かった。軽すぎる。彼女の頭が俺の胸に寄りかかった。
「ダンテ！」
俺の右腕が前に進み出た。「はい、ボス」
「建物を封鎖しろ。誰も出すな。電話もさせるな。イザベラを拘留房に入れろ。逃げようとしたら、脚を撃て」
「マルコ――」イザベラが言いかけた。
「黙れと言ったはずだ」
俺はルチアの顔を見下ろした。あまりにも青白い。こめかみの切り傷からはまだ血が滲み出ている。
「俺の車だ。今すぐ」
片手でハンドルを握り、もう片方で助手席のルチアをぐっと抱き寄せる。そのまま車体をきしませながら、コーナーを猛スピードで駆け抜けた。
運転中も彼女を近くに置いておけるように、座席を一番後ろまで下げていた。彼女の頭は俺の肩に乗っている。身動き一つしない。
「ルチア……頼む、しっかりしろ」俺はアクセルをさらに強く踏み込んだ。「もうすぐ着く」
携帯を掴み、ルッソ医師に電話をかけた。
彼はワンコールで出た。「モレッティか？ 何が――」
「手術室を準備しろ」俺は赤信号を突っ切り、背後でクラクションが鳴り響く。「妻が怪我をした。妊娠しているんだ。あと十分で着く」
電話の向こうは沈黙した。
「モレッティ……奥さんって？ いつから――」
「さっさと手術室を準備しろと言ったんだ！」俺はハンドルに拳を叩きつけた。「街で一番の産科医を呼べ。どこから引きずり出してこようが構わん。今すぐやれ」
「わかった、今すぐに――」
俺は電話を切り、ダッシュボードに放り投げた。
また前方に赤信号。俺は速度を落とさなかった。ただクラクションを鳴らし続け、交差点を突っ切った。誰かが俺を避けるためにハンドルを切った。知ったことか。
「ルチア」俺は彼女を見下ろした。彼女の目はまだ閉じられていたが、唇がわずかに動いた。「ルチア、聞こえるか？」
彼女のまぶたが震えた。
「そうだ、ルチア、しっかりしろ。もうすぐだ」
シャツが濡れていくのを感じた。彼女の血だ。あまりにも多くの血。
これは俺のせいだ。全て。彼女を守るために秘密にしていたのに、そのせいで彼女は殺されかけた。俺たちの赤ちゃんも殺されかけた。
「すまない」俺は囁いた。言葉が喉にざらついた。「ああ、ルチア、本当にすまない。俺が皆に話すべきだった。俺が君を守るべきだった。俺が――」
彼女の手が動いた。ほんのわずかな動きで、彼女の指が俺の胸に触れた。
「マルコ……」彼女の声はかろうじて聞こえる程度だった。「赤ちゃんが……」
俺のハンドルを握る力が強まった。「赤ちゃんは大丈夫だ。二人とも大丈夫だ。約束する。ルチア、君も赤ちゃんも必ず助かる」
またコーナーを速すぎるスピードで曲がった。病院はもう二ブロック先だ。明かりが見える。
「聞こえるか？」俺は彼女の額に唇を押し付けた。「君は助かる。二人ともだ。そしたら、これを全部立て直す。何もかもだ。もう隠れたりしない。秘密もない。誰もが君が俺の妻だと知ることになる。この赤ちゃんがモレッティ家の跡継ぎだと知ることになる。そして、二度と誰もが君を傷つけることはない」
病院の入り口が見えてきた。ルッソ医師がすでにストレッチャーと看護師二人を連れて外にいた。
俺は急ブレーキをかけ、車は甲高い音を立てて止まった。看護師たちが駆け寄る前に、俺はすでに車を降り、ルチアを腕に抱いて彼らに向かって走っていた。
「手術室だ、今すぐ！」ルッソ医師が叫んだ。
彼らは俺から彼女を受け取り、ストレッチャーに乗せ、走り出した。俺も彼らと一緒に走り、ストレッチャーのレールに手をかけていた。
「申し訳ありません、ここから先は……」看護師の一人が言いかけた。
「止められるもんなら止めてみろ」
彼女はそれ以上何も言わなかった。
手術は三時間十四分かかった。
俺はその間ずっと手術室の外に立ち、ドアの上の赤いランプを見つめていた。ダンテがいつの間にか現れ、俺を座らせようとしたり、血まみれのスーツを着替えさせようとしたりした。
俺は彼を無視した。
俺の指は何度も首にかけた十字架のペンダントに触れた。ルチアの聖母マリアのペンダントと対になるものだ。彼女が小さな、誰も気づかないようなものが欲しいと言ったから、一緒に作らせたものだった。
その計画も台無しだ。
ルッソ医師が三度目に出てきた。「モレッティさん、ハリス先生がジョンズ・ホプキンスからたった今到着しました。彼女はこの辺で最高の腕です。彼女なら――」
「俺の子供はまだ生きているのか？」
彼は躊躇した。「胎児の心拍は……弱いです。ですが、あります」
「弱い」
「はい。ですが、ハリス先生はハイリスク妊娠の専門家です。彼女なら――」
「なら、仕事をさせろ」
彼は頷き、中に戻っていった。
俺は壁際の定位置に戻った。
弱い心拍。だが、まだある。まだ生きている。頑張れ、我が子よ。ただ、頑張ってくれ。
時間は引きずられるように過ぎた。看護師たちが行き来し、機械が鳴り、手術室のドアの向こうで声が囁かれた。
午前八時十二分、ついにドアが開いた。
手術着を着た女性が、サージカルマスクを外しながら出てきた。彼女は五十代で、黒髪に白髪が混じり、鋭い目をしていた。
ハリス先生。
俺は壁から身を離した。「どうなんだ？」
彼女は微笑んだ。
「モレッティさん」彼女は言った。「奇跡です」
