第182章 物語を聞かせてあげる

林田知意と自由が帰宅するや否や、自由のスマートフォンが震えた。佐藤聡からのメッセージだ。

「自由。今日はママの機嫌が悪いんだ。たくさん甘えさせてやってくれ」

 その文面を見て、自由は少しだけ目を見張った。パパに言われなければ、ママの機嫌が悪いことに気づかなかったからだ。

 以前、アメリカで暮らしていた頃もそうだった。仕事でどんなに不愉快なことがあっても、林田知意は帰宅する時には必ず笑顔を浮かべていた。負の感情を家庭に持ち込むことは決してなく、ましてや自由の前でそれを見せることなどありえなかったのだ。

「どうして今日は、ママの機嫌が悪いの?」

 自由は首をかしげる。まさか、パパと一緒...

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