第212章 どうして降りないの

田中ひなは、凍りつくような冷たい表情で低く唸るように応じた。

「いいわ、分かった」

 言い捨てるなり、彼女は踵を返して立ち去った。だが、向かった先は田中家ではない。車を飛ばし、林田知意の別荘へと直行したのだ。

 林田知意がこの国に定住を決めた際、田中ひなはすでに手を回してその住所を特定していたのである。

 ただ、これまでは後ろめたさもあり、乗り込んで騒ぎを起こす勇気が出なかった。何しろ、今の佐藤聡はあの女に肩入れしている。万が一、騒ぎ立てたせいで佐藤聡に完全に見限られたらどうすればいいのか――その恐怖があったからだ。

 しかし、田中ひなが一週間も連絡を絶っているというのに、佐藤聡は...

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