第230章 彼女の注意を逸らす

横塚昌利はため息をついた。この女が血や殺伐とした場面を恐れないことは分かっていた。彼が退出を勧めたのは、単に彼女が自由のことを心配しすぎるのではないかと危惧したからにすぎない。

何しろ母親である。実の娘の腕から血を抜かれるのを目の当たりにすれば、胸が張り裂けるような思いをするに決まっている。

治療の途中で、林田知意が子供を不憫に思うあまり「やめてくれ」と制止に入りでもしたらどうするのか。横塚昌利はそれを懸念していたのだ。

横塚昌利が自由の腕に刺さっていた銀の針を抜くと、その透き通るように白い腕には痛々しい赤腫れが残っていた。

傍らに立つ林田知意は思わず口元を覆う。その瞳には深い悲痛の...

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