第334章 一銭も手に入らない

林田康純は極端に体裁を気にする男だった。妻の世津子が盛田会社の入り口でわめき散らしているのを見て、恥ずかしさのあまり顔から火が出る思いだった。

「おい、もういいから早く行くぞ。恥ずかしくないのか? ここは盛田会社だぞ。これ以上ここで騒いだら、明日のトップニュースになってしまう」

康純はそう言い捨てると、そそくさとその場を離れようとした。

康純の歩く速度は早かったが、世津子は彼を逃がすつもりなど毛頭なかった。それどころか、彼の言葉を聞いてますます腹を立てていた。

「康純、それはどういう意味よ! たとえニュースのトップになったとしても、恥をかくのは私たちじゃないわ。あの女よ!」

世津子...

ログインして続きを読む