第58章

「私がここにいなかったら、あなたは道端で寝ていたことになるよ」

佐藤聡は淡々とした表情で彼女を見ながら、そう言いつつ病院へと歩き出した。

林田知意はあたりを見回してから、ようやく状況を思い出したようで、恥ずかしそうに佐藤聡の肩をぽんぽんと叩いた。

「下ろして。自分で歩けるから」

彼女の不満げな表情を見て、佐藤聡はすぐに彼女を下ろした。

病院に着くと、医師は林田知意の状態について尋ね、簡単に症状を説明した。体温計で測ってみると、なんと三十九度もあった。

彼女がぼんやりしていたのも無理はない。すっかり熱で頭がおかしくなっていたのだ。

医師が彼女を診察している時、彼女の体からアルコー...

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