第63章

高橋契が言葉を切った途端、周囲の気温が急激に下がったように感じられた。まるで氷の洞窟に突き落とされたかのようだ。

彼は佐藤聡をちらりと見やり、それ以上口を開くのを躊躇った。調査対象の男は佐藤聡と互角の実力者であり、集められた資料のほとんどが、その男の優秀さを裏付けるものだったからだ。

話せば話すほど佐藤聡の怒りを買うことは明白だ。高橋契はここで口を閉ざし、資料を直接見せることにした。

佐藤聡は荒々しくファイルを振ると、ページをめくった。

男の本名は葉田南霆。だが、その名を外部で知る者は少ない。アメリカ本部にも滅多に姿を現さず、周囲からは『葉田さん』と呼ばれ、敬遠されつつも一目置かれる...

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