第69章

林田知意は口元を綻ばせた。あの子ったら、美味しいからといって食べ過ぎてしまったのが恥ずかしくて、母親である自分が外で待っていると出てきづらいらしい。

「分かったわ。ママは入り口で待ってるから、終わったらすぐに出てくるのよ。勝手にどこか行っちゃ駄目だからね」

「うーん、わかったー」

林田知意が洗面所を出ようとした矢先、正面から誰かの胸板に衝突してしまった。

相手が誰かを確認する間もなく、彼女は反射的に謝罪の言葉を口にする。

「ごめんなさい、不注意で……!」

最近、どうしてしまったのかしら。帰国してからというもの心ここにあらずで、外でトイレに行くたびに誰かとぶつかって...

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