第80章

林田知意はそれが不作法だと承知していたが、言葉選びは極めて婉曲で、相手の社長の顔を十分に立てるものだった。幸い、相手も彼女の人となりを知っていたため、無礼だとは感じなかったようだ。

何しろこの場において、林田知意と言葉をかわせること自体が光栄なのだから。

「林田社長、それは水臭いですよ。私はただ、葉田さんが体調を崩されているとは知らなかったのです。もし知っていれば、無理に勧めたりはしませんでした」

彼はそう言いながら、林田知意の返杯を受けた。

林田知意がワインを飲み干すと、口の中に熱い刺激が広がった。今日の宴会で振る舞われているのはワインばかりだが、彼女は元々酒が得意ではない。今の酒...

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