第84章

これは田村翔太が林田知意のために案じた策だったが、心配には及ばない。尻尾を掴まれることなど、万に一つもあり得ないからだ。

佐藤聡ほどの人物ともなれば、一歩外へ出るだけで、彼を求める人間は星の数ほどいる。

「ええ、分かったわ」

佐藤聡が去った後、田村翔太は二人が互いに腹を探り合うような様子を見て、心中で首を傾げた。

林田知意と佐藤聡の間に何らかの因縁があることは察していたが、深く詮索するのは憚られた。

田村グループを後にした林田知意は、一人で夜の街を歩いていた。季節は夏だというのに夜風は思いのほか冷たく、彼女は自らの二の腕を抱きしめるようにして、ゆっくりと歩を進める。

脳裏を占める...

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