第87章

田中ひなは、拒絶されたことに腹を立て、胸の奥で苦いものが渦巻くのを感じた。

「聡、そんなに長いこと女性とご無沙汰で、欲求不満にならないの? 私はあなたの婚約者よ。佐藤家の屋敷に一晩泊まるくらい、至極当然のことじゃない」

佐藤聡の表情は冷ややかだった。田中ひなが何を求めてここに来たのかは明白だが、彼の中には彼女に対する興味など微塵も存在しない。

キャミソール姿どころか、たとえ全裸で目の前に立たれたとしても、情欲のかけらも湧かないだろう。

「田中ひな、前にも言ったはずだ。俺たちの婚約は破棄された。最近は忙殺されていて、その手続きや周知に時間を割けなかっただけだ」

田中ひなは焦りを滲ませ...

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