第148章 昔の話なんてしないで

千葉清美は車のドアに背を預けた。

逸る心を、どうにかして落ち着かせなければならない。

こんな最悪な気分のまま、家に帰るわけにはいかなかった。

一旦、会社に戻ろう。

そう決めた。時間もまだ早いし、少しなら仕事もできる。

気持ちが完全に凪いでから帰宅しても、決して遅くはないはずだ。

その時、道路の向こうから誰かがこちらへ駆けてくるのが見えた。

千葉清美は驚きに目を見開き、目の前に現れた福江翔也を凝視した。

この男、一体どこから湧いて出たのか。

まったく気づかなかった。

吐き気を催すほど不快なその顔を見て、千葉清美は思わず一歩後ずさりする。眉をひそめ、訝しげな視線を彼に向けた。...

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