第161章 めちゃくちゃ

守谷栄は実験室へ続く階段の踊り場で、意識的に足を緩めた。

彼は実験室の方角を見上げる。

すでに明かりが漏れていた。

彼は何事もなかったかのように、今しがた上がってきたという風を装う。

千葉清美がドアの前に佇んでいる。

頬の涙の跡は、すでに慌てて拭い去ったようだった。

彼は微笑みを浮かべて声をかけた。

「清美、こんな時間まで残っていたのかい?」

千葉清美は無理に作った笑顔を彼に向ける。

「今日の実験データが芳しくなくて。もう一度、校正していたんです」

彼女は彼を見つめた。

「栄さん、どうして戻ってらしたの?」

守谷栄は自分のロッカーへと歩き出し、振り返って爽やかに笑って...

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